それでいて代わり映えのしない話(2)

僕には母親がいた。僕がしたい話は、いつだってそれだけだ。
 
僕は、具体的な行為を何一つ思い出せないけれども、母親に愛されていた確信がある。
その母親はいつの日か、僕を見失い、僕は母親を見失った。
 
ああ、誰に話すでもない話ほどつらいものはないのかもしれない。